─旧台北水源地─
バロック式建築のポンプ室―水道博物館
数年前までは水道博物館の知名度は低かったですが、テレビコマーシャルの背景に使われてから、台湾にはまだこのように美しい建物が残っているのかと人びとを驚かせました。しかも台北公館の繁華街の真っ只中にです。そこには一棟のバロック式の古い建築が建っていて、典雅な欧風の佇まいに、広々とした庭園、なるほどカメラマンの人気スポットになるはずです。
水道博物館の前身は「台北水源地ポンプ室」です。創建は日本時代の1908年から、100年以上の歳月を経ています。建築の外観は古典的な風情を湛え、台湾老建築のなかでも屈指の優美さを誇ります。博物館の周囲は回廊に囲まれ、イオニア式の柱が美しいです。内部天井は鉄骨構造で広々としていて、窓の格子にも鉄材が使われています。屋根は銅片が張られた円頂設計で、当時の西洋志向がうかがわれます。
台湾都市水道建設の原点
1896年8月、台湾総督府は英国人ウィリアム・バートン(William K. Burton)を招聘し、総督府技師浜野弥四郎とともに、台北の水道網建設の調査にあたらせました。1908年に、取水口・ポンプ室(現在の水道博物館)・諸設備がさきに誕生し、その翌年に配水管・浄水場および貯水池が完成しました。浄水場の開始とともに、一日二万トンの水を十二万人に供給することになりました。台湾で初めての現代的上水道の始まりました。
それから数十年にわたってのこのポンプ室は台北市民に清潔な水を供給し続け、1977年にようやく引退しました。その後、1993年6月に国家三級古跡(市定古跡)に指定されるとともに、台北市が八千万元を投じて修復に乗り出し、ポンプ室を発足当時の姿に甦らせると同時に、水道の歴史に関わる写真や器材を蒐集して、台湾最初の水道博物館を誕生させたのです。
水道のテーマパーク
水道博物館および四周の敷地は水道をテーマにした公園となっています。開放されている面積は2.5ヘクタールを超え、自然水博物館・水霧花園・水源地花園・観音山歩道・管材彫塑園・配水器材・公館浄水場といったゾーンに分かれています。さらに、水と親しめる水場もあって、夏の日中には親子で賑わいます。博物館の敷地に入ると、まず玄関そばの「親水池」(水場)が目に入ります。休日には大勢の子どもたちが水と戯れていて、博物館という冷たいイメージを一新させてくれます。右手のほうに進むとバロック風の博物館本館が見えます。厳粛な玄関、重厚な屋根、優美な柱や壁の彫刻と、まず建物の美しさに圧倒されます。内部に入ると、高低の異なる地面に五つの清水抽水機と四つの原水抽水機があり、それぞれ詳細な解説がついています。
建物の真正面には日頃はめったに見られない浄水場があります。大小さまざまな池が並び、水道の浄化過程の一端がうかがえます。節水の重要性も学べるでしょう。建物後方には多くの配水管がおかれています。一本一本、いろいろな色彩に塗られていて、大小規格の異なるパイプを使って不思議な空間が出現しています。園の裏には一本の歩道がのびていて、登りつめるとやがて小観音と呼ばれる小山にたどりつきます。そこからは昔日の貯水槽が望めます。貯水槽の周辺には深紅に彩られたバロック風の建物が並びます。小山は決して高くないですが、天気がよければ台北の町並み・新店溪、遠くの山々までが見渡せます。