現在、三峡の祖師廟を語るとき、まず李梅樹教授のことを想起せざるを得ません。言い換えれば、李教授の永年にわたる渾身の奮闘がなかったら、彫刻芸術の殿堂と呼ばれる今日の祖師廟は存在しえなかったのです。
祖師廟の彫刻を創り上げるために、李梅樹教授の指導にそって、それぞれのパート毎に綿密な設計図がひかれました。すべて石柱、石壁について、陰刻にするか浮彫にするか、いちいち図面のうえで検討され、それから絵師が図案を描き上げます。それが完成すると、彫り師が、一本一本の線を鑿ひとつ斧ひとつで彫り上げていきます。そして、気の遠くなるような時間を経て、しだいに陰刻、浮彫の全容があらわになっていくのです。
祖師廟を見学される皆様には、この他に比類ない見事な彫刻芸術を鑑賞していただく際に、なにとぞそこに注がれた李梅樹教授の心血と無数の匠の一刀一鑿に思いをはせてくださいますようお願いします。
三峡区中華路に位置する李梅樹記念館は、三峡に生まれ育った李梅樹画家(1902-1983)を記念して、その子孫が創建したものです。館内には、李画伯の手書きの原稿や手紙、生活用具、証書、賞状ならびに油絵の作品が陳列されています。
李画伯は早期に日本へ留学し、東京美術専門学校で洋画を専攻しました。油絵に長じ、写実的技法を得意としました。台湾に戻ってから、大学や専門学校で教鞭をとり、郷土芸術の発展に尽くしました。とくに、三峡祖師廟の再建にはその全精力と半生を注ぎ込みました。三峡祖師廟を思うとき、李画伯を想起せざるを得ません。李梅樹教授とその指導を受けた大工たちの努力なしには、東方芸術の殿堂と呼ばれる今日の祖師廟は存在しえなかったのです。