淡水は以前「滬尾」と呼ばれていました。原住民が話す言葉を文字にしたものですが、もとは河口という意味だったようです。台北盆地の西北部に位置する淡水は、山河に取り巻かれた風情豊かな美しい街です。
紅毛城は淡水の歴史を語るには欠かせない古城で、1626年にスペイン人によって創設されました。その後オランダ人の手によって改修され、アントニー城と改称されました。かつて、台湾の人々はオランダ人のことを赤毛と呼んでいたことから、のちに「赤毛城」と名付けられ、「滬尾城」とも言われました。長い間、英国人に占領され、1980年になってようやく本当の意味で台湾に返還されました。200年余りの長い歴史を持つ赤毛城は、現在国家遺跡に指定されています。建物全体は赤レンガで覆われ、なかは昔のままの状態を留めています。
また、文物記念館も付設されており、数々の史料や図案などが展示されています。古城を挟んで芝生や花壇の向い側にある赤レンガの屋敷は英国領事館の宿舎として使われています。展望台に登ってみると、淡水八景に数えられる美しい夕焼けが眺められ、近くにある牛津学堂、馬偕氏の旧宅、淡水学院などへも参観ができます。これら古めかしい建物は歳月こそ経てはいるものの、昔ながらの状態を留めており、そこを散策していると、まるでタイムスリップしたような気分になります。涼風がそよそよと吹く中、なつかしい雰囲気あふれる街をぶらぶらします。時折近所の家の庭木の葉がはらはらと舞い落ちる様子を眺め、ほんのひととき時間を止め、淡水ならではのちっぽけな贅沢を思う存分味わってみます。川岸の町並みに沿って、昔のままの素朴な建物を観賞したり、魚だんご、厚揚げ、ゆで卵など淡水ならではのB級グルメをほおばりながら歩みを進めて行きます。
船乗り場に行き、夕暮れを観賞するなら、淡水・八里遊覧船に乗ることをお勧めします。船上からはシラサギが飛ぶのを眺め、絶え間なく流れる淡水河の水の音に耳を澄ませます。対岸の八里に着いたら、食指が動くクジャクハマグリを食べるのを忘れてはなりません。美景の宝庫、淡水には行ってみるしかありません。